【開催レポ】神戸市産業振興財団主催「人材採用・組織力向上セミナー」にHRE事業部・花岡が登壇しました
2024年11月1日、BOX HR Enablement事業部の花岡 伸太朗が、神戸市産業振興センターで行われた「人材採用・組織力向上セミナー」に登壇しました。
セミナーの第1部では、「新しい人を採用できない」という経営者が抱える悩みにフォーカスし、“採用力向上に向けて”というテーマで、花岡が講話しました。
第2部では、株式会社CCイノベーション人事グループ長・山本 博己さんが登壇し、「人が育たない」「辞めてしまう」という悩みの解決策として、“人の成長・定着を促すための仕組み”を解説しました。
ここからは、セミナーの様子を一部ご紹介します。
【第1部】採用力向上に向けて——BOX・花岡
求職者数<<<企業の求人数、現在は圧倒的売り手市場
20.6倍(*)。花岡が最初に提示した数字は、昨年度に工業高校を卒業した方の求人倍率です。
本セミナーには、製造業を営んでいる方が多数参加されているということで、花岡は「約20社が1人の求職者を奪い合っている状況で、採用競争力をつけていく必要がある」と言います。
加えて、「営業上の競合は同業他社になるかもしれませんが、採用市場における競合は、製造業以外の企業も当てはまることを念頭に入れてほしい」と、競合が多い状況で戦わなければならないことを伝えました。
(*)参考:公益社団法人 全国工業高等学校長協会「卒業者等に関わる状況調査」
フレームワークで自社の魅力を分析
他社ではなく自社を選んでもらうためには、やはり自社ならではの魅力を伝えていかなければなりません。BOXではさまざまなフレームワークを活用し、採用戦略を導き出すためのサポートをしています。
たとえば、Customers(求職者)、Competitors(競合他社)、Company(自社従業員)、の3つの要素から考える「3C分析」を紹介。求職者はどんなタイミングで転職を考え、転職先に何を求めるのか。競合他社はどんな手を打っているのか。入社してくれた社員はなぜ自社を選んだのか。
経営視点ではなく、求職者や従業員視点で、自社の立ち位置を把握することが重要であると解説しました。
ほかにも、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素から自社を知る「SWOT分析」を、人事担当者はどのように応用すべきか紹介しました。
採用基準を設定し、選考体験を設計
自社分析がひと区切りしたら、自社にマッチする人材のイメージを固めていきます。
たとえば、上記の人材を採用したいとします。このように人物像を確定していくのは少々骨が折れる作業ですが、あらかじめ採用基準を設定することで、多大なメリットを得られると言います。
「採用条件を設けることで、合否を出す際に客観的な判断ができるようになります。それ以外にもメリットがあり、エージェントとの打ち合わせ、会社資料・求人票・面接における訴求内容の精査、面接時の質問項目の策定など、さまざまな場面で採用基準を活かすことができます」
特に、訴求内容の精査や、どの段階で何を訴求するかを決めることが、選考体験を設計する上でポイントになると話す花岡。
BOXでは転職活動のフェーズを「無関心→認知→応募→選考→内定→入社」と考えており、求職者を次のフェーズに進めるため、訴求内容や施策を段階別に検討する必要があると話しました。
採用広報活動によって、面接以外の時間でも訴求
続いて花岡は、採用広報活動のポイントを紹介。ここでは、Philosophy(企業理念)、Profession(事業・仕事)、People(人材・風土)、Privilege(働き方・待遇)と、発信内容を4つの要素に分類する方法を解説しました。
実際にBOXでも4Pに分類して発信内容を検討し、BOXへ応募してきた方の選考フェーズによって、共有する情報を変更していると事例を挙げます。
「求人媒体やエージェントサービスによっては、面接での訴求だけではなく、“こんな資料や記事があるのでお時間があるときにご覧ください”と面接前に訴求することも可能です。面接当日には“この前お送りした資料ご覧いただけましたか”とアイスブレイクとして話題にすることもできます」
求職者と直接話さない時間を使って、求職者への訴求や疑問解消を試みることが大切であると伝えました。
質疑応答
第1部が終了し、来場者やオンラインで視聴されている方から、花岡へ質問が寄せられました。
Q. 中小企業の多くは、給与や福利厚生などさまざまな観点で大企業から後れを取り、母集団形成が難しい状況です。打開策はあるのでしょうか?
A. 大手企業が競合となると、対策が難しいところかと思います。できることとしては、先ほど4つのPを紹介したように、企業理念・人・事業など、待遇面以外にも企業の魅力を多角的に発信していくのが大切です。また、面接に来てくれた方がワークライフバランスを気にしているのであれば、そこを重点的にヒアリングしてみます。「どんな働き方を希望されますか?」「それだったら自社でも提供できます」と、ひとつずつ回答していく。大手にも負けない魅力を丁寧に伝えることは可能だと思っています。
【第2部】人の成長・定着を促すための仕組みとは——CCイノベーション・山本さん
第2部では、人を採用した後の成長・定着をテーマに、CCイノベーションの山本さんが登壇しました。
学校教育の現場より成長を促す仕組みがあるか
人事コンサルタントとして中小企業を支援する山本さんは、根本的な考え方として、学校教育のような仕組みを参考にしていることを紹介。
「インプット・アウトプットの機会、教員からの動機づけやフィードバック、進級や進学といった目標など、人が育つ要素が学校には揃っています。ですが、これらを社員に提供できている会社はどれだけあるでしょうか」
先輩社員によるロールプレイングを行っていなかったり、1on1などを実施していなかったり、社員の学習機会が少ない企業を数多く見てきたと問題提起をします。
役職ではなく、等級という考え方
たとえば社員を動機づけるために、経験年数や成果などをもとにした「等級制度」を採用している企業が増えている、と紹介する山本さん。会場の方に手を挙げてもらうと、およそ3割の企業が等級制度を導入していました。
決まった数のポストが空くのを待ってもらうのではなく、等級に応じた職務内容や報酬を設定することで、将来の働き方やお金の使い方をイメージしてもらうことも大切であると話しました。
また、工場長、副工場長、ライン長、のようにマネジメント職として昇格するルート以外に、職人としての技術力を磨けるマイスターのような昇格ルートも用意することも、社員の働く意欲を促すことになると補足しました。
匿名のアンケートとインタビューで従業員の本音を知る
最後に山本さんは、CCイノベーションで展開しているソリューションを紹介。「新しい人を採用できない」「人が育たない」「辞めてしまう」——経営者が抱える主な3つの悩みの原因特定、施策の立案などを行っていると言います。
山本さんたちのような第三者が介入するメリットは、社員が経営陣に伝えづらいことをワンクッション置いてヒアリングできること。
「我々は顧客の社員に対して、アンケートとインタビューを両方実施しています。性別、年代などの情報を記載いただき、たとえば“会社の方針は従業員全員に浸透していると思いますか?”といった質問に回答してもらいます。すると、どの属性の人が“浸透していない”と回答しているのか分かるので、その人たちからインタビューを通じて詳しい事情を聞きます」
「これまでに蓄積されたデータを利用し、他社を比較してどんな傾向にあるかが分かるため、何を変えるべきか・続けるべきかが見えてくるのです。社員の回答を見てショックを受ける経営者もいますが、“声に出してくれて良かった”、“ここには満足してくれていたんだ”と前向きに捉える方も多くいます」
退職をされてしまうと、何が原因だったのかを突き止めることは難しいと話す山本さん。組織の現状を定期的に把握し、適切な対策を講じることが重要であるとして、セミナーは終了しました。
質疑応答
Q. 自社では1年に1回だけ30分程度の面談しかやっていません。毎月やるとなると、聞き手にかなりのスキルがないと続かない気がしますが、1on1の質を一定に保つために工夫していることはありますか。
A. 我々は、上長から受けたフィードバックの内容を登録するツールを使用しており、周りの人がどんなフィードバックをしているのか、全社員が閲覧することができます。フィードバックの方法を他者から学び、自身の引き出しを増やしてもらうことで、メンバーの成長を促す上長になれると考えています。
Q. 従業員のスキルや等級を見える化させる方法や、評価制度の仕組みづくりに悩んでいます。評価者と被評価者双方が納得できる仕組みを作るにはどうすべきでしょうか?
A. 業務上必要なスキルを洗い出し、力量管理表を独自に作成している企業もあります。◯◯を1人でできる、人に教えられるなどいろいろな基準を設けることで、従業員の目標が明確になります。ただしその基準を整理し、評価制度として運用するのはなかなか大変です。ひと括りにするのではなく、”保有しているスキル”と“一定期間のパフォーマンス”を分けて評価するのは、ひとつの考え方としてあります。
本セミナーでは、採用力向上について触れましたが、BOXでは採用活動に限らずHRチームが抱えるさまざまな課題に対してご支援をしています。経営・事業課題に合わせて、サービスをご提案いたしますので、ぜひご気軽にご相談ください。