5年連続で前年30%成長、組織規模は5年で4倍。急成長を遂げるラクスに生まれた変化とは
2015年、東証マザーズ(現:東証グロース)上場、2021年には東証一部(現:東証プライム)上場を果たした株式会社ラクス。近年は、テレビCMで「楽楽明細」や「楽楽精算」というサービス名を耳にすることも増え、企業、サービスともに急激に存在感を増しています。
今回は、2022年から採用スピードを加速させる同社に、BOXの牧野がインタビュー。今後の事業展開と、採用方針について聞きました。
「決してスマートな成功を遂げてきた会社ではない」ラクス社のこれまで
――この機会に改めて、ラクスさんのこれまでを伺っていければと思います。ラクスさんは2000年に創業していますが、当時の事業内容はなんだったのでしょうか?
2000年当時、ラクスの前身となる株式会社アイティーブースト(2010年1月に株式会社ラクスに変更)では、もともとITエンジニアスクール事業(現在のIT人材事業)を行っていました。今のサービスから考えると少し距離がありますよね。
その後、メールディーラーの販売を開始し、当時は、クラウド事業とIT人材事業の2つの事業を柱としていました。クラウド事業のメールディーラーは、メールなどの問い合わせを複数のスタッフで共有・管理できるツールです。今でこそメール共有システムは当たり前に利用されていますが、当時はまだ一般的ではなく、業界でいち早くスタートしたのがラクスでした。(IT人材事業は、現在、グループ会社のラクスパートナーズが事業運営しています。)
クラウド事業では、自らの事業を通して、「当社のノウハウを強みとして、価値提供できる領域はどこか?」という考えのもと、勝てる市場に参入することを重視して複数のサービスを提供してきました。結果的に生まれたのが、経費・交通費などを一元管理できる経費精算システム「楽楽精算」です。
――初めから経費精算システムを開発していたわけではなかったのですね。
はい。今でこそ成功していますが、最初から「ここを思い切り攻めるぞ!」というところはなく、思考錯誤を繰り返しながら、結果的にたどり着いたのが、楽楽精算、楽楽明細、楽楽販売を中心とするバックオフィス向けサービスだったんです。
――なるほど。僕も含めて、ラクスさんのことを「最初から戦略的に成功してきた会社」と見ている人も多いような気がします。実はそうではないのですね。
立ち上げ当初は、当然ですが今ほど知名度があったわけではないんですよ。トライ&エラーをする中でやっとマーケットフィットする強いプロダクトを複数生み出し、急激に事業拡大してきたのがこの10年、というのが正しい認識です。
ラクスの強みは、「過去の成功体験から、組織全体で再現性をもって取り組めるよう仕組み化する」ところにあります。逆に言えばそこに行きつくまでに多くの失敗体験があるからこそ、再現性のあるものが徐々に蓄積されてきています。
――この10年でようやくマーケットフィットしたとのことですが、そのきっかけはどこにあったのでしょうか?
ラクスが上場した2015年より少し前のころから、大手企業を中心にデジタル化が推進されるようになり、市場が急激に変化し始めました。そして、2020年にコロナ禍を迎えたタイミングからデジタル化が加速度的に進み、わたしたちの事業もそれを機に一気に伸長しました。
5年で4倍。組織規模の拡大に成功した背景
――ラクスさんが2022年より掲げている「年間500名の中途採用」は業界の中でも類を見ないほどの規模ですよね。その採用スピードからも、事業規模が急速に拡大している様子が見て取れます。
ラクスでは今「中期経営目標の5カ年計画」を進捗させており、2023年度がちょうど3年目にあたります。計画の大きな柱となっているのが「年30%の成長」です。おかげさまで、1年目、2年目は着実に達成し、3年目も計画通り順調に進捗しています。
売り上げを伸ばそうとするとそれに比例して人員数も必要になってきます。そのため2022年以降は年間500人の中途採用を目標に採用を進めています。2023年現在、気づけばグループ全体で2000人を超える組織になりました。5年で4倍の組織規模になっている計算です。
――5年で4倍。すさまじいスピード感ですね。組織が大きくなると新たな課題も出てくると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。
自部門の例を挙げると、これまでは、短期間で急激な成長を目指すために、即戦力を集めることに力を注いでいました。一定の経験やスキルが蓄積された人たちが入社していたので、スピード感を持ってラクスの成長に貢献してくれていました。
ただ、この先さらなる拡大を目指していくとなると、属人的な組織で同じような成長速度を維持するのは難しくなってきます。まさに今その課題に直面していて、スキルレベルをもう一段底上げする仕組みづくりが必要なフェーズに突入しています。組織規模が大きくなっても生産性を落とさない。そのための仕組みづくり、体制整備に着手しているところです。同様に、事業部門においても、急激な人員増に伴い、生産性の維持向上は、喫緊の課題となっています。
――生産性の向上に力を入れられているのですね。ラクスでは、最近「フル出社」から「週1日のリモートワーク」制度を取り入れました。生産性向上と逆行する施策のようにも思えますが、この意図は?
おっしゃる通り、ラクスではもともと「戦略的オフィスワーク」を掲げ、基本的には全員出社の体制を作ってきました。ベースになっていたのが、ラクスにある「コミュニケーションを重要視する文化」です。
わからないことをすぐに聞ける、目標達成のために隣の席の人と連携する、現場に落ちている課題をキャッチアップできる…全員出社で顔を合わせて仕事をすることで、よりタイムリー・スピーディーに必要なコミュニケーションをとることができる環境をつくってきました。毎年の成長率30%以上という高い目標を掲げる弊社においては、在宅ワークだけでそこに到達するのは非常に難易度が高いと考え、「戦略的オフィスワーク」を導入していました。
ですが、コロナによって否が応でも在宅をしなければならない経験をしたときに、「本当にフル出社でなければ到達できないか?」と考えるようにもなりました。結果、「そうではない」と。
たとえば週1日の在宅ワークであれば、コミュニケーションを密に取る必要のない業務をその日に集中させられれば、逆に効率的に作業を進められるかもしれない。週1日は通勤時間をなくして、プライベートな時間を充実させることで、生産性の向上に良い効果をもたらすかもしれない。このように柔軟に新しい考えも取り入れて、今では毎週水曜日を選択型の「在宅ワークの日」としています。
――候補者の中にはリモート勤務を希望する人もいますが、やっぱりフル出社が良いという人も多いんですよ。ラクスさんのように、週1リモートワークはとても良いバランスのように思えますね。
そうですね。今後もリモート勤務の拡大やフルリモートは考えておらず、これまで通り出社をメインにしながら全社の成長を踏まえた最適な働き方を追求していきたいと思っています。
また、「出社メイン」なのはハードワークをさせるためではありません。成長速度が著しいとはいえ、ラクスではむやみに残業を増やしたり、社員一人の業務時間・業務量でカバーするなどの力技は行いません。出社することで効率よく働き、18時の定時とともに退社する。それが理想的な働き方だと思っています。
“市場に価値提供できているか”が最重要項目
――ラクスさんではこの1年、組織拡大のほかにもさまざまな変化が起きました。筆頭と言えるのが、2023年7月に行われたクラウド勤怠管理・給与明細閲覧サービス事業のM&Aかと思います。今回のM&Aの背景を教えてください。
もともとラクスは、中小企業向けにベスト・オブ・ブリード型のサービス開発をしてきました。ベスト・オブ・ブリード型とは、各分野でもっともよいソフトウェアを選択して、それらを組み合わせてシステムを構築することです。一方で、企業内のソフトウェアをすべて同じベンダーの製品でそろえることはスイート型と呼ばれています。
中小企業では、事業展開のプロセスの中で新しいものを試したり入れ替えたりする傾向がありますし、すべての製品を一気に導入できるほど予算がない場合もあるため、ベスト・オブ・ブリード型の方がよりニーズにマッチしやすく、ラクスも開発当初からそのスタイルでやってきました。
そのためクライアントも中小企業が中心だったのですが、近年事業成長を遂げる過程で、ありがたいことに大企業やレガシー企業のお客様からも多くのお問い合わせ、引き合いをいただくようになりました。そこで、楽楽勤怠と同じ領域で展開をしていて、大企業に強みを持つ外部のサービスのM&Aに踏み切りました。
――すでに同様のサービスを開発しているラクスさんであれば、そのまま大企業への展開もできたように思います。そうしなかった理由はあるのですか?
ラクスは事業展開をする際、「わたしたちが市場に価値提供できるか」を最重視します。仮に、ラクスが他社よりも高い価値提供ができないと判断した場合は、すでに動いている事業でも撤退する可能性があるほどです。
ただ「市場への高い価値提供」は、必ずしもすべてを自分たちで行うという考え方ではありません。マーケットの中でより高い価値提供を目指したとき、M&Aという手段をとることでよりスピーディーに展開できるのであれば、その選択肢は排除しません。
わたしたちが単独で大企業向けのサービスを作り展開するよりも、外部のサービス、企業と手を組むことでお客様により良い価値提供ができる、、という考え方のもと、今回のM&Aに至りました。
――「自社の拡大のため」「売上を伸ばすため」ではなく「高い価値提供をするため」という言葉には、ラクスさんの社風が表れている気がします。
たしかに「価値提供」は社内でも頻繁に使われる言葉かもしれません。あまりに当たり前なので今牧野さんに言われるまであまり意識してきませんでしたが、「世の中に対して価値を発揮できているか」という視点は非常に強いように思います。
市場に価値提供できているか?を確認する指標として、CACやLTVといった言葉も社内には浸透していて、かなり精緻に数字を読んでいます。数字のバランスを見たときに、提供しているサービスがちゃんと市場にフィットしているか≒市場に価値提供できているか。それを追求しているのが、ラクスの強みのひとつです。数字を精緻にキャッチアップし、改善を繰り返す。ラクスが毎年単年黒字を達成しているのも、経営陣の「数値に対するこだわり」「市場への価値提供に対するこだわり」の結果かもしれません。
現状維持マインドを捨て、大きな成長を。ラクスのこれから
――上場から8年が経ち、安定した経営をされているラクスさん。候補者さんからは「落ち着いた会社なんですよね?」「保守的なんですよね?」といった質問をされることもあります。実際の雰囲気を教えてください。
実際は、保守的な人よりも進歩的な人が多いように思えます。
年30%成長は、簡単なことではありません。わたしたちは既に200億規模の売上をつくる会社なので、売上高数億の会社と比べると30%の持つインパクトは非常に大きく、決して現状維持のやり方で達成できる数字ではありません。
だからこそ、創業から23年経った今も、多くの“新しいチャレンジ”をしています。先ほどお伝えした年間500人採用もそうですし、組織拡大に合わせた体制の再構築、さらに、成長戦略の一つとして、柔軟にM&Aも行っていく予定です。当社はSaaS業界の中では創業20年以上経つ老舗企業と思われることが多いですが、実際は新しいチャレンジや改善の取り組みを積極的に行っています。
初めての取り組みがすぐに成功することはそう多くはありません。大胆な事業戦略をとれば、上手くいかないことも多々あります。ですので、失敗や変化を楽しめる、難しい課題を超えることに喜びを感じられる、というのは、採用において大事なポイントです。
ラクスくらいの組織規模になると、どうしても組織そのものが安定志向になりがちです。ですが、受け身であれば成長の機会は得られませんし、いい成果を残すのも難しい。今のラクスには、変化や失敗を恐れずにトライできる人が求められています。
――働いている人自身が変化を求められることもありますか?
もちろんです。
ラクスの強みは、大企業のような安定した経営基盤を持ちながら、ベンチャー企業のように積極的かつ柔軟なトライができること。大手とベンチャー両方のいいとこどりでチャレンジできる環境だと思っています。
大企業にいらっしゃる方は、「新しいトライをしたくて、一足飛びでベンチャー企業に飛び込んでみたら、想像以上に整っていないカオスな環境で、どうして良いかわからなかった、全く力を発揮できなかった」、ベンチャー企業にいる方は「トライできる環境はあるのに、資金が潤沢ではないため予算の都合でチャレンジできないことも多い」といったモヤモヤを抱えることも多いと思います。ラクスは両者にとってプラスとなる経験を提供できる環境だと思いますので、ぜひご興味ある方は積極的に話を聞きに来てほしいです!
BOXは、あなたの人生を見据えた転職支援を行います
BOXでは、ラクスへの転職相談を受け付けています。ラクスの文化や制度、働き方など、長く続く関係のなかで得たネットでは得られないリアルな情報をお伝えします。もちろんご相談に乗るなかで、ほかの企業をご紹介することも可能です。多様なバックグラウンドを持つメンバーが、責任を持って全力で支援します。転職を検討している求職者の方は、ぜひご連絡ください。
***編集後記***
「僕、前職に12年いたんですよ。30人くらいから600人くらいの組織を経験して、いい意味ですごくカオスな環境の中であれもこれも自分でやらなきゃいけないって経験をしたから、10年くらいたったときに『次は専門性を磨きたい』と思うようになった。ラクスでは『人事に関するあれもこれも』ではなくて、採用に特化して集中してやらせてもらっているから、すごくありがたいんですよね」。
編集をしながら、最後まで本編に入れるか悩み続けたのが、野田さんのこの言葉でした。
人事の方にインタビューするとき、当たり前ですが、ほとんどの方が「人事としての目線」で話をしてくださいます。ところが野田さんからこの言葉が飛び出したのはインタビューの終盤で、「それでは、質問は以上になります」とわたしがPCを閉じた後でした。記事に載せてほしいから話す、という意図はなく、イチ“中途入社者”としての生の言葉――。そんな感覚がありました。
ベンチャー・スタートアップで働く方のほとんどが、事業を伸ばすために広い守備範囲を持って動いています。一方、インタビューを通して多くの転職希望者の話を聞く中で、「長期のキャリアを考えたときに『なんでもできます!』だけで良いのだろうか」と思い悩む方も多くいらっしゃいました。
ラクスはベンチャー・スタートアップのような成長率を目指していますが、業務範囲は良い意味で限定されており、専門性を高めるのに最適な環境です。冒頭の野田さんの言葉は、「より専門的なキャリアを歩みたい」と考える人の背中を押すに違いない、と1時間半の取材を通して確信しました!
編集担当:中野